研究課題/領域番号 |
22592210
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
小野 由起子 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (80345511)
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研究分担者 |
芳澤 享子 新潟大学, 医歯学系, 助教 (60303137)
泉 直也 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (10361908)
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キーワード | 骨芽細胞 / 幹細胞 / 脂肪 / 骨 / 再生 / 骨髄 / 組織工学 / 生体材料 |
研究概要 |
本研究では広範囲にわたる顎骨欠損部に対し、より低侵襲に骨再生が得られるような自家骨代替材料となる細胞-基材複合体の開発を目指している。骨髄よりも低侵襲に採取できる脂肪組織由来幹細胞を用いて多孔性β-リン酸カルシウム(β-TCP)ブロック複合体を作製し、ラット背部皮下に移植したところ、組織学的に骨の形成は認められたが、骨髄由来幹細胞を用いた複合体と比較すると骨の形成はわずかであった。そこで脂肪組織由来幹細胞の骨芽細胞への分化誘導条件を含む培養条件を詳細に検討し、骨髄由来幹細胞を用いたときと同程度、もしくはそれ以上に骨が形成される脂肪組織由来幹細胞-基材複合体を作製する手法の開発を目的とする。前述した目的を達成するためにラットの腹部脂肪組織から間葉系幹細胞を採取し、基本培地に添加するデキサメタゾン、βグリセロリン酸、アスコルビン酸の濃度や培養期間を変えて骨芽細胞への分化を最も誘導する培養条件を検索した。そして脂肪組織由来幹細胞をβ-TCPブロックに播種し、明らかになった至適条件下で骨芽細胞に分化誘導して作製した細胞-β-TCP複合体をラット背部皮下に移植し、経過時的に屠殺して移植部を採取して標本を作製して組織学的に観察したところ、これまでの培養条件で作製した複合体よりも骨の形成量は増加したものの、骨髄由来幹細胞を用いて作製した複合体と比較すると、その量は著しく少なかった。そこで至適濃度のデキサメタゾン、βグリセロリン酸、アスコルビン酸を加えた培地に未分化幹細胞の骨芽細胞への分化誘導能をもつ骨形成たんぱくや骨芽細胞の増殖促進能をもつ線維芽細胞増殖因子を添加したり、骨折部の骨癒合を促進するといわれている低出力超音波パルス照射をおこなうことによって骨芽細胞への分化をさらに促進する培養方法を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
培養下で間葉系幹細胞を骨芽細胞にどれだけ効率よく分化させられるかが細胞・基材複合体を移植した際の骨形成量に影響するので、脂肪由来間葉系幹細胞を骨芽細胞に分化誘導する至適培養条件の検索が本研究において重要であるが、その至適培養条件を明らかにすることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
骨形成たんぱくや線維芽細胞増殖因子を添加して作製した細胞-基材複合体と添加せずに作製した複合体、または培養中に低出力超音波パルス照射をおこなった複合体とおこなわなかった複合体をそれぞれラット背部皮下に移植し、経時的に屠殺して移植部を採取して作製した標本で、骨形成の程度を比較するとともに新生骨の構造や骨芽細胞系細胞および破骨細胞の分布を観察する。未脱灰標本をマイクロCTで撮影し、二次元、三次元画像を作製して細胞-基材複合体移植部の微細骨梁構造を観察する。また骨質パラメータとして骨梁幅、骨梁数、骨梁間隙、骨量を算出して比較する。さらに骨形成関連因子のmRNA、蛋白質の発現の検索を行う。。
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