研究概要 |
これまでの顎骨骨隨炎の研究は単一(無機)材料を主体にした研究が行われていた.無機材料は,形態付与が困難で溶解・吸収性の面で問題点があり,有機材料は形態付与が容易で加水分解して生体内に吸収されるが,その分解過程で炎症を惹起することがある.そこで今回は,有機・無機材料の欠点を補い,かつ利点を生かした複合材料(ハイブリッド)の開発を行うことが,顎骨骨隨炎への基礎的研究に有効であると考えた.各種抗菌薬を含有させた高機能性薬物徐放担体が開発されれば,国内・国外の生体材料研究における先駆的研究になるとともに,顎骨骨隨炎の治療期間を短縮できるため臨床応用に即した画期的な研究になると考えられる.まず,各種抗菌薬を含有させた高機能性薬物徐放担体の基本物性の検討の結果,PLLAとPLGAの共重合体や各種抗菌薬の重量比が大きくなればなるほど,機械的強さは低下し,硬化時間は延長した.粉末X線回折の結果,PLLAとPLGAの共重合体の重量比が大きくなればなるほどハイドロキシアパタイトの形成が阻害された.捜査型電子顕微鏡(SEM)の結果から,各種抗菌薬を含有することによりセメント表層に大きな結晶構造が観察され、各種抗菌薬がセメント表層に付着していることが確認出来た。各種抗菌薬を含有させた高機能性薬物徐放担体からの抗菌薬の徐放特性の検討の結果,GMを含有した複合材料では長期の徐放を認めたが,FMOXやVCMを含有した複合材料ではほとんど徐放しなかった.以上の結果,GMを含有した有機・無機の複合材料は,顎骨骨隨炎への有効な高機能性薬物徐放担体として機能する可能性が示唆された.
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