ビスフォスフォネート(BP)は骨粗鬆症、多発性骨髄腫、悪性腫瘍の骨転移などの治療に広く用いられているが、副作用としてBP誘発性顎骨壊死がある。ステロイド自体も骨壊死を誘発し、BP誘発性顎骨壊死の増悪因子の一つに挙げられている。しかし、ステロイド誘発性骨壊死の治療にはBPやスタチンが使用されており、これら薬剤の相互作用は非常に複雑である。そこで、本研究ではステロイドならびにBPによって誘発される顎骨壊死の病態を解明することを目的に、まず臨床での問題点を明らかにした。その結果は日本口腔外科学会九州地方会で報告した。次に、ステロイドならびにBPの歯肉角化細胞ならびに骨芽細胞に対する直接的影響を解析するため安定した歯肉角化細胞と骨芽細胞の作成を試みた。歯肉角化細胞はそのままでは安定した継代培養が困難であったため、SV40とc-fos遺伝子を導入することによって不死化させた。その結果、歯肉角化細胞の安定した継代培養が可能となった。次に、骨芽細胞は脂肪由来幹細胞から作成した。まず、脂肪由来幹細胞からCD105陽性細胞を磁気カラムを用いて選択的に採取し、骨芽細胞の分化誘導の可能性について検討した。その結果、CD105陽性幹細胞は時間依存性に増殖し、TGFb存在下で培養するとアルカリフォスファターゼ活性の上昇、アリザリンレッド染色陽性を示し、脂肪由来幹細胞から骨芽細胞へ分化誘導させるこが可能であることが明らかになった。今後、これらの細胞を用いる事でステロイドならびにBPによって誘発される顎骨壊死の病態解明が可能となった。
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