研究概要 |
本研究は,歯性感染症に対する生体防御機構における歯原性上皮細胞増殖と先天性免疫機構の関連性について明らかにすることを目的としている.本研究を遂行するため,摘出歯根嚢胞重層上皮ならびに不死化ラット歯原性上皮細胞(HAT-7)を用いた基礎的実験により,抗菌ペプチドの歯原性上皮増殖における役割ならびに歯性感染時の歯原性上皮細胞の役割について分析し,歯原性上皮細胞が増殖する種々の口腔疾患との関連性などについて検討する.以上のような検討を行うことで,歯原性上皮に由来する疾患についてのさらなる理解,また抗菌ペプチドを利用した新たな治療法開発の可能性が期待される. 今年度は,歯根嚢胞上皮摘出切片における抗菌ペプチドならびにE-カドヘリンの局在性の検討として,摘出嚢胞切片の免疫組織学的染色を行い,摘出嚢胞上皮に抗菌ペプチド(LL37,α-ディフェンシン,β-ディフェンシン1~3)ならびにE-カドヘリンが存在していることを確認した.また,ラットから抽出された歯原性上皮細胞株(HAT-7)を用いて,細菌産生内毒素(LPS),ならびに口腔内細菌暴露後の抗菌ペプチド,E-カドヘリン発現の状態を確認する目的で,HAT-7培地内に細菌産生内毒素ならび口腔内細菌を注入し,12,24時間後にRNAを回収し,HAT-7からの抗菌ペプチド,E-カドヘリン発現状況をPCRにて確認した。その結果,細菌産生内毒素暴露後24時間で,LL-37,β-ディフェンシン2ならびにE-カドヘリンの発現増強が確認された。 以上のことから,歯原性上皮細胞は,感染時に上皮由来の抗菌ペプチドを発現し,さらに細菌感染に対して細胞間接着を強固にすることで感染防禦機転に関与していることが示唆された.
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