研究概要 |
顎堤の吸収や顎骨欠損に対する骨の再生治療は,歯科・口腔外科領域における重要な治療の一つである。従来、顎堤の形成あるいは顎骨の再建には遊離骨移植,あるいは海綿骨細片移植などによって行われてきた。これらの方法は有用性が高い反面,骨採取に伴う手術侵襲も小さくないことから,より低侵襲で確実な骨の再生法の確立が望まれてきた。 申請者らは,これまで行ってきた実験で骨髄から採取した未分化間葉系細胞から分化誘導させた骨芽細胞と多孔質β‐TCPを組み合わせた細胞ハイブリッド型人工骨の作製に成功している。そこで今回はiPS細胞(induced pluripotent stem cells)を用いた骨再生の基盤技術を確立することを目的として以下の実験を行った。 マウス(C57/BL6系統由来) の皮膚細胞から作製されたiPS細胞(iPS-MEF-Ng-20D-17)とマウス胎児線維芽細胞または種々の骨芽細胞(UAMS-32, 0P9, ST-2, RD-c6, POBなど)との共存培養下でiPSの骨芽細胞への分化誘導を試み,分化に最も適した支持細胞の種類について検討した。また,支持細胞と共存培養したiPS細胞ならびにESGRO Complete Basal Mediumの中で培養したiPS細胞に骨芽細胞への分化に必要な分化誘導因子(活性型ビタミンD3, デキサメタゾンなどを濃度別に添加し,骨芽細胞への分化誘導法について検討した。 その結果,iPS細胞と骨芽細胞株(UAM-32細胞)との共存培養系で活性型ビタミンD3 10nMおよびデキサメタゾン 100nMを添加して14間培養したところ,アルカリフォスファターゼ陽性細胞が出現し,さらに3週間目には石灰化物が形成され,骨芽細胞への分化誘導が確認できた。
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