研究課題
生体の恒常性維持には24時間の慨實日リズムが重要な役割を担っており、その調節には細胞内に存在する時計遺伝子が密接に関連していることが明らかになっている。実際に慨日リズムの障害は、癌を始め、炎症性病変や代謝障害など、様々な病態と密接に関連している。本研究では、口腔内の炎症進展機構に関連した時計遺伝子の変化を明らかにすることを第一の目的としている。実際に、ヒト正常歯肉と比較して、慢性歯周病や慢性歯肉炎の組織では、低酸素関連遺伝子であるHIF-1α、DEC1、DEC2のタンパク発現量が増加することを明らかにしてきた。そこでさらにヒト歯肉線維芽細胞や歯肉上皮細胞を用い、それぞれの培養細胞に炎症性サイトカインを添加した際の低酸素に関連する遺伝子の経時的変化を検討した。その結果、HIF-1αのタンパク発現量が増加することを明らかとした。また同時にDEC1、DEC2のタンパク発現量も増加することが解明された。この結果から、HIF-1αとDEC2には相関関係がみられること、さらにDEC2には慨日リズムが認められることを明確にした。また実験的にマウスに歯周病菌porphyromonas gingivarisを感染させ、歯周病罹患の実験モデルマウスを作製し、同様の検索を行い、培養細胞を用いた実験系と同様の結果を得た。炎症の制御機構における時計遺伝子の関連を明らかにすることは、時計遺伝子の制御を介した薪たな試みである抗炎症療法の開発につながることが強く期待される。今後はさらに糖尿病などの代謝障害を背景とした慢性歯周病患者より採取した検体を用いて、同様の検索を行い比較する。
2: おおむね順調に進展している
口腔内の炎症進展機構に関連した時計遺伝子DEC2の発現の変化について、培養細胞、疾患モデルマウスを用いて確認した。
近年、糖尿病と歯周病の関連性が注目されているが、糖尿病患者は健常者と比較して歯周病の罹患率が優位に高い。そこで本年度は、健常者、歯周病患者に加え、糖尿病患者を対象に加え、DEC2のタンパク発現量を中心とし、それぞれの病態での時計遺伝子の発現を明らかにすることにより、健常者と糖尿病患者のそれぞれに特有に影響する因子、また両者に共通する影響を与える因子を明確にし、病態発症に関連している時計遺伝子の制御機構を解明する。
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