研究課題/領域番号 |
22592237
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大廣 洋一 北海道大学, 大学院・歯学研究科, 助教 (40301915)
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研究分担者 |
戸塚 靖則 北海道大学, 大学院・歯学研究科, 特任教授 (00109456)
北村 哲也 北海道大学, 大学院・歯学研究科, 助教 (00451451)
進藤 正信 北海道大学, 大学院・歯学研究科, 教授 (20162802)
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キーワード | 抗癌剤耐性 / シスプラチン / 口腔癌 |
研究概要 |
我々は、抗癌剤適応の可否を術前に判定するためのマーカーを検索している。抗癌剤耐性遺伝子には、内因性耐性遺伝子と外因性(獲得)耐性遺伝子の2種類が知られている。内因性耐性遺伝子とは、細胞内でもともと発現が亢進しており、これが原因で細胞が抗癌剤に大して抵抗性を示す遺伝子群である。これに対し、外因性耐性遺伝子は、元来発現が低いものの、抗癌剤に晒されると発現が亢進する遺伝子群である。これまでの研究では、抗癌剤処理によって生き残った細胞を耐性株とし、親株と遺伝子発現を比較することで耐性遺伝子を同定してきた。つまり樹立された耐性細胞を用いる研究は、一度抗癌剤に曝されているので外因性耐性遺伝子に対する研究と考えられ、これは再発した腫瘍に対する実験モデルであると考えることができる。我々は術前に抗癌剤に対する耐性の有無を調べるという目的のため、内因性耐性遺伝子のみをターゲットにした検索方法を考案した。それによって候補となった遺伝子のうちオステオポンチンとPTP4A1について研究を進めた。発現ベクターを用いた強制発現系、およびsiRNAを用いたknockdown系の実験によって、どちらの遺伝子発現もシスプラチン抵抗性との関連がみられた。 さらに解析を進めるため、臨床サンプルを用いて実際の腫瘍組織内におけるこれらの遺伝子の発現と抗癌剤の感受性について調べた。扁平上皮癌にシスプラチン治療を行った後、臨床効果より腫瘍サンプルをCR群、PR群に分けた。オステオポンチンおよびPTP4A1の遺伝子発現をリアルタイムPCRで調べた所、どちらもPR群で高発現していた。これらのことから、われわれが新しく提案した内因性耐性遺伝子の検索方法が実際に有用であることが明らかとなった。またこれらの遺伝子発現が耐性となるメカニズムについて検索したところ、どちらもAKTの活性化を誘導することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画どおり、腫瘍組織からmRNAを抽出し、候補となった遺伝子発現をリアルタイムPCRで調べた。抵抗性を示した腫瘍組織からmRNAの抽出に成功し、耐性遺伝子と考えられたオステオポンチンとPTP4AのmRNAの発現を調べることができ、研究は順調に進んでいると評価できる。免疫組織学的検索は、陽性と陰性の境界も曖昧であったため、他の適した抗体を探す必要があると考えることから,免疫組織学的な研究における進捗状況は十分とはいえない。24年度で解析する予定であった耐性の分子メカニズムについては、当初の計画以上に順調に進んでいると考えるため、全体的な評価としてはおおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定と大きな変更はなく、本年度の推進方策は平成22年度及び23年度の延長上に位置する。平成23年度に行った臨床サンプルを用いた研究は、平成24年度も引き続き継続し、症例数を増やす予定である。 また,耐性の分子メカニズムを解明する予定である。耐性細胞では、細胞生存活性に大きく寄与するAKT活性が亢進していることが明らかとなっているため、オステオポンチン、PTP4A1とAKT経路との関係に着目している。 さらに、マイクロアレイで候補となった他の遺伝子もシスプラチン耐性に関与している可能性が高いことから候補となった遺伝子400についてパスウェイ解析をおこなったところ、クラスターを形成する遺伝子群が同定された。これらが相互作用して耐性に働くことが十分に考えられるため、これらの遺伝子の発現についてこれまで行なってきたようにsiRNAを用いて、シスプラチン耐性との関連性について検討する。
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