研究課題/領域番号 |
22592238
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
長田 哲次 浜松医科大学, 医学部附属病院, 講師 (60264058)
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研究分担者 |
瀬藤 光利 浜松医科大学, 医学部, 教授 (20302664)
倉部 誠也 浜松医科大学, 医学部, 助教 (60466737)
小野寺 麻記子 北海道大学, 大学病院, 医員 (20443963)
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キーワード | 顕微質量分析 / 口腔癌 / 分子生物学 |
研究概要 |
顕微質量分析法は質量分析の手法を組織切片上に二次元展開することによって、組織上に存在する物質の固有の質量とその局在情報を同時に得ることができ、また、生体組織の形態観察時に生体分子を同定し高い分解能で分布測定が可能である。具体的には凍結試料を薄く切片化した生体試料にマトリックスを噴霧して均一な微細結晶をつくり、観察したい部位に正確に微小径のレーザーを照射して微小領域でのイオン化を行い、さらにレーザーを二次元走査しながら各照射点に存在する分子のイオン化を行い、発生イオンを質量分析計で検出する。 当大学附属病院を受診した頭頚部扁平上皮癌の患者を対象に選択した症例の凍結材料を作製し顕微質量分析装置を用い、口腔癌の生検・手術検体の組織中に含まれる脂質・代謝物、生体分子のイメージ化と組織の顕微質量分析を行った。同時にそれぞれの症例をHE標本で臨床病理学的に沿った評価をした。その結果、正常上皮組織、癌組織にそれぞれ特異的なシグナル76個のピークを検出した。マン・ホイットニーのU検定を行ったところ799.9m/z、772.9m/z、798.9m/z、820.8m/z、848.9m/zらに有意差を認められた。 パラフィン包埋組織の処理および質量顕微鏡法による解析を行った。臨床病理学的評価を行った試料の組織を顕微質量分析し、相互の比較を行った。通常病理学標本として使用されているパラフィン包埋組織を薄切し、切片を脱パラフィン後トリプシンによってon-tissue digestion法を施し断片化させ顕微質量分析を行った。癌の分化度で比較、高分化型、未・中分化型ともに72個のピークを検出、特に433.3m/z、435.5m/z、457.6m/z、651.5m/zにピークを認めた。また、マン・ホイットニーのU検定を行ったところ878.6m/z、755.3m/z、590.4m/z、648.3m/z、416.2m/zらに有意差を認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
顕微質量分析法を使用し凍結切片、パラフィン包埋組織より口腔癌の組織中に含まれる生体分子の可視化ができた。正常上皮組織、癌組織にそれぞれ特異的なシグナルを検出できた。
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今後の研究の推進方策 |
今後、口腔癌の顕微質量分析の解析を引き続き行い、特異的なシグナルの生体分子の同定を行う。解析を行うことで新しい転移および予後マーカーとなりうる物質の同定を試みる。 22年度23年度に行ってきた結果をまとめ、学術誌に論文発表する。
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