研究課題
本研究の目的は悪性腫瘍組織で過剰発現が認められるミッドカイン蛋白(MK)の口腔扁平上皮癌の腫瘍マーカーとしでの可能性を探ること、およびMK発現と薬剤耐性に対する病態解析である。本年度はMKの腫瘍マーカーとしての有用性を検討するため良性腫瘍や前癌病変を有する患者の血清MK値の測定、健常人の血清MK値と年齢における検討を行った。その結果、常人より良性腫瘍や前癌病変患者での血清ミッドカイン値は高以事が判明した。さらに健常人においても加齢に従い血清MK値は上昇する傾向にあることが判明した。以上より、MKの腫瘍マーカーとしての活用については疾患の既往や年齢が重要であり、今後はマルチマーカーとしての有用性について検討を行い診断率の向上にむけて実験を行っていく予定である。さらに本年度はシスプラチン耐性ヒト口腔扁平上皮癌細胞株(Sa-3R)を用いて、MK発現の抑制と抗癌剤による治療効果の検討を行った。その結果、親株である口腔扁平上皮癌細胞株(Sa-3)よりSa-3RのほうがMKmRNAの発現量は少なく細胞上清中のMK蛋白量も少ないことが判明した。その理由を解明するためSa-3よりsiRNAを用いてMKの発現を抑制したところCell cycleを促進するcyclin D、cyclin EのmRNA発現が減少し、Cell cycleを抑制するp21、p15、p19のmRNA発現が増加していた。さらにsiRNAでMK発現を抑制したSa-3にCDDPを投与したところMTSアッセイで有意に増殖抑制がみられた。以上の結果を総括すると、Sa-3Rでは、Sa-3がCDDP耐性を獲得するに当たりMKを減少させ細胞周期を抑制し細胞増殖を抑えCDDPの細胞内への取り込み量を減少することでSa-3Rは耐性を獲得しているのではないかと考えちれた。今後は他の抗癌剤耐性口腔扁平上皮癌細胞株において検討を行っていく予定である。
すべて 2010
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International Journal of Oncology
巻: 37 ページ: 797-804
Oral Oncology
巻: 46 ページ: 657-671