研究課題
本研究の目的は悪性腫瘍組織で過剰発現が認められるミッドカイン蛋白(MK)の口腔扁平上皮癌の腫瘍マーカーとしての可能性を探ること、およびMK発現と薬剤耐性に対する病態解析である。本年度はMKのマルチマーカーとしての有用性を検討するため、口腔癌患者と健常人の血清を用いて既存の腫瘍マーカー(SCC抗原、CYFRA21-1)を計測した。その結果をMK血中濃度と組み合わせることで診断率の向上が得られるか検討したが、SCC抗原、CYFRA21-1で高値を示す検体のほとんどがMK血中濃度も高値を示した。この結果は腫瘍マーカーとして特異度の上昇には寄与したが感度を低下させる結果であった。そのためより精度の高い診断マーカーとしての可能性を模索するには、口腔癌患者と健常人の血清を用いてSELDI-TOFーMSでプロファイリング解析を行い、新たなマーカー候補因子について検討する必要があると考えられた。さらにこれまでの研究によりMKが抗癌剤耐性に強く関与していることが示唆されてきたため、口腔癌の新規治療法の開発としてシスプラチン耐性ヒト口腔扁平上皮癌細胞株(Sa-3R)を用いて実験を行った。これまでの実験でSa-3Rでは、親株であるSa-3がCDDP耐性を獲得するに当たりMKを減少させ細胞周期を抑制し細胞増殖を抑えCDDPの細胞内への取り込み量を減少することでSa-3Rは耐性を獲得しているのではないかと考えられた。そのためMKが細胞周期のどの部位で作用するかフローサイトメトリーを行い、MKを作用させた細胞ではG0/G1期の割合よりもS期の割合は高くなる結果がえられた。この結果は抗癌剤耐性癌に対してMKを作用させると細胞周期が活性化し、抗癌剤の効力向上につながるのではないかと推察された。
2: おおむね順調に進展している
MKの腫瘍マーカーとしての研究、抗癌剤耐性口腔扁平上皮癌に対するミッドカインの病態解析は計画どおり進行していると考えられるが、治療法の開発までには至っていない。
上記のようにMKの腫瘍マーカーとしての研究は順調であり、臨床応用に向け最終調整を行っていく予定である。さらにMKを用いた治療法開発においては、MKが抗癌剤耐性に深く関与していることより、今後はMK導入抗癌剤耐性株を作成し抗癌剤の効力の変化を検討していく予定である。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
Oncology Reports
巻: 27 ページ: 1674-1680
doi:10.3892/or.2012.1684.Epub 2012 Feb 13