研究課題
本研究の目的は悪性腫瘍組織で過剰発現が見られるミッドカイン蛋白(MK)の口腔扁平上皮癌の腫瘍マーカーとしての可能性を探ること、およびMK発現と薬剤耐性に関する病態解析を行うことである。これまでの結果で口腔扁平上皮癌患者の血中MK濃度は健常人に比較し有意に高値を示すことがわかったが、より鋭敏なマーカーを目指してマルチマーカーとしての有用性をSELDI-TOF-MSを用いて検討した。その結果、口腔癌患者の血中では健常人と比較し多くの炎症性蛋白や癌関連蛋白の過剰発現が見られたが、プロファイリングの結果、MKと組み合わせることで有意に診断率の向上、特異度の向上につながるような蛋白はなかった。これまでの結果より血中MK濃度は、感度の高いマーカーとして一次検査での単独使用が最も適当だろうと考えられた。また、これまでの研究によりMKが細胞周期を抑制することで抗癌剤耐性に強く関与していることが示唆された。そこでシスプラチン耐性ヒト口腔扁平上皮癌細胞株(Sa-3R)をヌードマウスの皮下に移植し抗癌剤(シスプラチン)とMK siRNAを腹腔内に投与した。その結果、MK siRNA+シスプラチン投与群ではシスプラチン単独投与群に比較し、腫瘍の縮小傾向が得られたが有意差はなかった。そこで実験で得られた腫瘍組織の免疫染色を行うと、Ki-67、p53、pRB、cyclinDでは両群間に明らかな差は見られず、VEGFのMK 免疫染色においてシスプラチン単独投与群に比較しMK siRNA+シスプラチン投与群では陽性率がやや低い結果が得られた。これらの結果は、MKは抗癌剤耐性扁平上皮癌において細胞周期を抑制するだけではなく血管新生を抑制することでも腫瘍を抑制したと考えられ、ミッドカイン発現抑制による薬剤耐性の変化は癌治療の新たな治療戦略となる可能性を秘めていると推察される。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Cancer Letter
巻: Volume 316, Issue 1 ページ: Pages 23-30
10.1016/j.canlet.2011.10.013. Epub 2011 Oct 20.