研究概要 |
進行・再発口腔がんを対象症例としたサバイビン遺伝子産物由来ペプチド単剤によるがんペプチドワクチン療法の第I相臨床試験の安全性ならびに有効性を確認し,その研究成果をCancer Science誌(Vol.102,2011)に報告した.現在,IFA(不完全フロイントアジュバント)とIFN (interferon)-αを併用したサバイビン遺伝子産物由来ペプチドの第I相臨床試験は予定症例数12例中6例が終了した.臨床効果はSD3例,PD3例で,腫瘍マーカー(SCC抗原値)は2例で低下がみられた.ワクチン投与後のテトラマー陽性CTL (cytotoxic T lymphocyte)増加は6例全例に認められた.安全性に関しては発熱,注射部位の発赤・硬結・掻痒感やAST・ALT上昇などが認められたが,いずれもgrade2以下であり重篤な有害事象は発生しなかった.免疫応答増強剤としてのIFN-αの至適投与量を検討するため,本年度はIFN-αを減量した臨床試験を予定している.本臨床試験で安全性および抗腫瘍効果,免疫学的モニタリングを行うことの臨床的意義は大きく,口腔がん患者の予後やQOLの向上に直結する極めて重要なトランスレーショナルリサーチとして位置付けられる.さらに,口腔がん特異的に発現のみられる新規がん抗原の解析・同定により,将来的には複数のがん抗原ペプチドを用いた免疫療法が可能になるものと考えられる.現在,Six-Transmembrane Epithehal Antigen of the Prostate (STEAP)やPOT-1あるいは口腔がんのCSC(がん幹細胞)の実験系を用いてがん抗原の同定とエピトープを解析しており,口腔がんに対するより効果的ながんペプチドワクチン療法の確立に向けての基礎研究が進行中である.
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今後の研究の推進方策 |
IFA(不完全フロイントアジュバント)とIFN(interferon)-αを併用したサバイビン遺伝子産物由来ペプチドの第I相臨床試験は,IFNα;150万IU,PEG-IFNα-2a;90ug投与群が終了した.次群より倍量(IFNα;300万IU,PEG-IFNα-2a;180ug)に増量の計画であったが,すでに現投与群においてワクチン単剤投与群と比較して十分に抗腫瘍効果が増強することが明らかとなった.そのため次群ではIFN-α投与量を現投与量の半量に設定(IFNα;75万IU,PEG-IFNα-2a;45ug)し,その安全性と有効性の評価を行う予定である.
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