研究概要 |
GRIM-19(the genes-associated with retinoid-interferon induced mortality)はインターフェロンβ(IFNβ)およびレチノイン酸(RA)の共刺激により誘導されるアポトーシス制御因子である。GRIM-19は,EGFなどの成長因子のシグナル伝達に関与する転写因子STAT3(Signal Transducer and Activator of Transcription 3)と結合し,STAT3依存性の遺伝子発現を抑制することにより癌細胞の増殖を抑制し,アポトーシスを誘導する. これまで研究代表者らは口腔扁平上皮癌細胞株におけるGRIM-19遺伝子の発現制御機構ならびにGRIM-19遺伝子の不活性化のメカニズムの解析を行ってきた。その結果、Ca9-22細胞ではIFNβ,RAによる共刺激でタンパク質レベルでのGRIM-19の発現が誘導された。一方、HSC-2細胞ではIFNβおよびRAの共刺激でGRIM-19の発現は認められず、遺伝子発現の不活性化が示唆された。そこでIFNβおよびRA刺激によるGRIM-19のmRNA発現に違いが認められるのか、リアルタイムPCRにて検討行った。その結果、予想に反してCa9-22細胞においてもIFNβ,RAによる共刺激12時間、24時間での有意なGRIM-19のmRNAの発現誘導は認められなかった。これらの口腔癌細胞株におけるGRIM-19遺伝子発現の非誘導性がIFNβに対する不応答性に起因しているのか、他のIFNβ誘導性遺伝子であるCXCL11、TRAILについて検討した。その結果、いずれの細胞においても有意なmRNA発現誘導が認められたことから、IFNβのシグナル伝達経路の異常によるものではないことが示唆された。Ca9-22細胞ではIFNβ,RAによりGRIM-19のタンパク質レベルでの発現誘導が認められることからGRIM-19の誘導には転写後の調節機構が関与している可能性が示唆された。
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