口腔癌に対して、放射線、5-FU系経口抗癌剤(UFTあるいはTS-1)およびOK-432の同時併用療法が、極めて有効であることを報告してきた。Th1サイトカインが抗腫瘍免疫反応の増強に働き、IL-10等のTh2サイトカインおよびTGF-βは抑制的に働くサイトカインであることが知られている。平成22年度は、まずOK-432によるTh1/Th2サイトカインおよびTGF-β1の誘導における、放射線および5-FUの影響つきin vitro実験にて検討した。ヒト末梢血単核球(PBMC)を、OK-432で処理することにより、IFN-γ、TNF-α、IL-12およびIL-18等のTh1サイトカインのみならずIL-10の誘導も認められた。TGF-βは未処理PBMCにおいても産生が認められ、OK-432処理でも有意な産生増強は認められなかった。OK-432と同時に5-FUで処理することにより、IL-10の誘導に有意な変化は認められなかったが、TGF-β産生の著明な抑制効果が認められた。放射線単独では、IL-10およびTGF-βの若干の産生増強が認められたものの、OK-432と放射線の併用により、IL-10およびTGF-βの有意な抑制効果が認められた。OK-432、放射線および5-FUの同時処理では、IL-10およびTGF-βの産生は最も強く抑制された。さらに、放射線および5-FUにより、OK-432によるSOCS3の発現増強ならびに、STAT3のリン酸化および転写活性化が抑制されていることが明らかとなり、IL-10およびTGF-βの抑制作用に、これらの分子が関係していることが示唆された。OK-432によるTh1サイトカイン誘導は、放射線および5-FUにより抑制されなかった。ヒト末梢血単球由来樹状細胞(DC)を、OK-432、放射線および5-FUで処理した時も、同様のサイトカイン産生パターンが認められた。OK-432、放射線および5-FUで同時処理されたDCは、OK-432単独処理DCに比較して、より強くアロT細胞を刺激し、IFN-γならびにアロ特異的CTLを誘導した。放射線、5-FUおよびOK-432同時併用療法が抗腫瘍免疫反応を増強させることが明らかとなった。
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