研究概要 |
口腔癌に対して、放射線、5-FU系経口抗癌剤および免疫療法剤OK-432の同時併用療法が有効であることを報告してきた。前年度までの研究で、ヒト末梢血単核球(PBMC)において、X線照射および5-FUが抑制系サイトカインの産生を制御すること等によってOK-432の抗腫瘍免疫効果を増強する事が明らかとなった。 樹状細胞(DC)ワクチン療法において、患者由来単球をGM-CSFおよびIL-4存在下で6日間培養し未熟DCを誘導しOK-432を添加して成熟DCを誘導しワクチンとして使用するが、この成熟DCを口腔癌の標準的化学療法剤5-FU, CDDPあるいはdocetaxel(DTX)で処理した。5-FUおよびDTXで処理した時に、成熟DCにて高い発現を認めていた免疫制御分子PD-L1, PD-L2, SOCS-1, -2, -3の発現を抑制した。5-FUあるいはDTX処理DCは強い抗原提示能、T細胞分裂刺激能を示し、抗癌剤処理DCと共培養したT細胞は強くIFN-γを産生した。この事は5-FUあるいはDTXとDCワクチンの併用療法により、さらに強い細胞傷害性T細胞(CTL)を誘導し高い抗腫瘍効果が得られる可能性を示唆している。担癌マウスにおいて、経口5-FU製剤S-1+DCワクチンの併用で強い抗腫瘍効果が得られた。この時、DCのリンパ節への移動能、リンパ球の細胞傷害活性ならびに腫瘍組織への浸潤能は共にDCワクチン投与群に比較してS-1+DCワクチン併用群で増強された。臨床検体の解析により、S-1を投与された口腔癌患者において制御性T細胞や骨髄由来サプレッサー細胞の減少を認めた。以上より、S-1が口腔癌患者の免疫環境の改善に寄与し、DCワクチンとの併用が有効である可能性が強く示唆された。 今回のデータは、化学療法を併用した新しい癌ワクチンのプロトコールの確立に大きく寄与すると考えられる。
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