研究概要 |
癌幹細胞は現在までに各種臓器の癌細胞株、および臨床検体で同定されてきた。癌幹細胞を標的とした治療法を開発するためには、癌幹細胞をいかに純化して分離できるかということが重要である。SP細胞を利用する方法で臨床検体を用いて癌幹細胞を証明したという報告は、固形腫瘍ではきわめて少ない。このため臨床検体の頭頸部扁平上皮癌より癌幹細胞株の樹立および継代培養法の確立を第一とする。SP細胞はGoodellらの報告に従い分離する。剥離した浮遊細胞液にHoechst3342を加えてインキュベーションの後、FACSにてpropidium iodine(PI)陰性の生細胞を選んでHoechstredおよびblueの2色に展開した結果、蛍光強度の低い特徴的な集団として得られるものがSP細胞である。ヒト頭頸部扁平上皮癌細胞株OSC-19,OSC-20,SCC-KN,SCC-25,HOC313をGoodellらの報告に従いSP細胞を分離した。SCC-25,OSC-19,OSC-20の細胞株でSP細胞を分離できた。癌幹細胞と考えられるVerapamil感受性細胞が0.04%程度含まれている事が明らかになり、その分画の細胞を10,000個NCD/SCIDマウスに移植したが腫瘍形成に至らなかったためSP分画の条件の検討が必要である。また分離したSP細胞を無血清培地にて培養するも細胞増殖の速度が遅く,全ての細胞株で継代が出来ていない。細胞は約1ヶ月程度,死滅していないが,人正常細胞以上に発育速度が遅い事が明らかになった。今後SP細胞の培養条件の同定を行う必要がある。癌幹細胞と上皮・間葉移行の関連が示唆されている事から、浸潤様式の異なる口腔扁平上皮癌培養細胞に対して癌幹細胞の存在をウエスタンブロッドでマーカーを検討している。
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