歯の神経を神経移植の際のドナーとして活用する実験を異種移植の系で行った。ヒトの抜去歯から歯髄を採取し、液体窒素で処理して抗原性を低下させた後、雄SDラットの坐骨神経の切断部位(10mm)に移植した。その際、神経を直接縫合することは困難であるため、人工神経としても利用できるキトサンチューブの内部に歯髄神経を填入して顕微鏡下でチューブの近位側、遠位側を坐骨神経の神経外膜に8-0の系で縫合した。移植後12週ならびに32週後に犠牲死させ、軸索新生をトルイジンブルー染色で確認した。Anti-neurofilament抗体とS-100抗体を用いた免疫染色は陽性であり、新生軸索ならびにシュワン細胞の存在が示唆された。これは、中枢側から軸索が移植したヒト歯髄内部に伸展していること、すなわち歯髄神経のシュワン細胞の基底膜を利用して、新生軸索が末梢側へ伸展していることが推察された。この所見より、歯髄も神経移植のドナーになり得る事が判明し、この結果を2010年9月21日Neurosceience letterに投稿した。しかし、同年11月3日査読結果が戻ってきて、電子顕微鏡(TEM)検査の所見必要とのコメントをいただきrejectされた。そのため、光顕を作成した切片で電子顕微鏡用の切片を作成し検討した。しかし、神経軸索新生の部分をピンポイントに切り出すことは困難であり難渋した。ついに軸索が作成されている箇所を描出はしたが、ただ、ヒトの歯髄の基底膜を利用している確固たる所見はなかなか得られない。現在、この点ついて検討している。今後は、この所見を得次第、再度欧米雑誌への投稿、ならびに学会発表を予定している。
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