研究概要 |
本研究は、DC IOPおよびAC IOPの効果の比較をラットの行動実験によって行った。254~296gのSD雄性ラットを使用し,今村らの方法に従い,CCIモデルラットを作製した。これらのラットを生理食塩水貼付群,リドカイン貼付群,生理食塩水AC IOP群,生理食塩水DC IOP群,リドカインAC IOP群,リドカインDC IOP群の6群に分けた。それぞれの群に,イソフルランによる全身麻酔下にて5,10,20,40および60分間の処置を行い,処置直後から30分ごとに120分後まで逃避行動閾値を計測した。 リドカインDC IOP群では5分間の処置から逃避行動閾値の上昇が認められたが,60分間の処置後であっても30分以上は効果が継続しなかった。リドカインAC IOP群では5,10,20分間の処置では逃避行動閾値の変化を認めなかったが,40および60分間の処置では,60分後まで効果が継続した。また,リドカイン貼付群および生理食塩水AC IOP群では,60分間の処置直後に逃避行動閾値の上昇が認められた。 DC IOPでは,薬物の輸送が効率的に行われ,短時間の処置でも逃避行動閾値が上昇したと考える。AC IOPでは,生理食塩水を使用しても逃避行動閾値が上昇したことから,中枢の情報伝達機構に何らかの作用を及ぼした可能性があると考える。そのため,リドカインAC IOP群にて効果時間が延長したのではないかと考える。 AC IOPは、DC IOPと比較すると、逃避行動閾値の変化がより長時間持続することから、慢性痛の治療に有効である可能性が示唆された。本年度の研究により、慢性痛治療としてAC IOPが有効であることの基礎的根拠の一つを示すことができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
免疫組織学実験により,三叉神経脊髄路核尾側亜核部のFos様タンパク陽性細胞数の変化を観察していく。 また,次の段階として安全性の確認を行っていく予定である。電極貼付部位の炎症の有無や,リドカインの体内への移行量を調査していく。リドカイン血中濃度は,当科には測定器具がないため,外注にて測定を依頼する予定である。
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