研究概要 |
【研究骨子】更年期様状態の動物モデルの口腔顔面領域に神経障害性疼痛を発症させた場合の痛みの感受性の変化,および痛み受容に関わる分子メカニズムについてターゲット遺伝子のmRNAの発現量を検索する.さらに,神経障害性疼痛に対して鎮痛効果が期待される漢方薬の修飾作用を検討する。 【研究実績】1.更年期様状態モデルラットでの神経障害性疼痛モデルの作製/モデルラットの行動活性と機械的刺激に対する反応性の検討;H22年度の予備調査の結果,若干の個体差はあるが,ほぼ均一なモデル作製ができている.具体的には,ペントバルビタール麻酔下に,180~200gの雌性WKYラットの卵巣を摘出し,その2または4週間後に眼窩下神経を結紮して三叉神経第2枝領域の神経障害性疼痛モデルを作製している.更年期様状態モデルラットの成否の指標として,全工程終了後に子宮の重量を測定し,良好な結果となっている.また,三叉神経第2枝結紮の実施時期は,予備調査の結果,現在は卵巣摘出2週間後がモデルとしては良好と考えている. 2.三叉神経第2枝結紮モデルについては,von Frey Testによる機械的刺激に対し,比較的安定して神経障害性疼痛が発症しているが,卵巣摘出によって疼痛閾値がさらに低下する傾向にあるが,現時点では有意ではない。今後,対照群については,スメアチェックによって性周期を厳密に把握し,女性ホルモンのエストラジオールがピークを迎える前発情期から発情前期の夜間を狙って実験を進める予定である.さらに,3.のvitro研究結果も踏まえて,卵巣摘出の影響を判断していく. 以上,均一なモデル作製は研究の信頼性を高める上で本研究の根幹と考え,これまで予備調査を繰り返している. 3.当該モデルでのReal time PCRによるターゲット遺伝子mRNAの定量;三叉神経節(TG)が小さいため測定に耐えうる組織量を速やかに摘出する手技の確立には本年度かなりの労力と時間を要したが,信頼性のあるデータ採取に適した(TG)摘出術を確立できた.目下,取りためたサンプルのmRNAの定量を行っている. 4.最終的な目標である漢方投与を牛車腎気丸から開始し,データ収集中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予備調査に始まって,研究の進捗状況は概ね順調と考える.しかし,モデルラットの作製,自由行動活性の評価,機械的刺激法とその評価,三叉神経節の摘出とReal time PCRなど,各手技の確立やプロトコールの確定に労力と時間を要し,資金繰りが厳しい状況である.また,当該モデルによる参考文献が少ないため,研究の進め方やデータの解釈などに関して,多施設との情報交換を積極的に行いながら現在にいたっている.本年度は行動学的内容に関する学会発表は行ったが,分子生物学的内容との関連も踏まえた成果を論文にまとめる点では,まだ時間を要すると思われる.
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今後の研究の推進方策 |
三叉神経第2枝結紮モデルについては,von Frey Testによる機械的刺激に対し,比較的安定して神経障害性疼痛が発症しているが,卵巣摘出によって疼痛閾値がさらに低下する傾向にあるが現時点では有意ではない.今後,比較する対照群については,スメアチェックによって性周期を厳密に把握し,女性ホルモンのエストラジオールがピークを迎える前発情期から発情前期の夜間を狙って実験を進める予定である. その上で,当初の目標である漢方投与を開始しており,対照群との比較をvivo, vitroで探求していく.もし,研究費が許せば,vitroではPCRによるmRNAの解析に加えて,免疫染色法によるターゲット遺伝子由来のタンパク発現を確認したい.
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