研究概要 |
頭部硬膜を10%マスタードオイルにて起炎させた片頭痛モデルラット群と、流動パラフィンを投与したコントロールラット群を作製した.両群において,三叉神経脊髄路核におけるc-Fos陽性細胞発現を調べた.片頭痛モデル群では,Obexレベルの1.4mm吻側から6.5mm尾側間において両側性にc-Fos陽性発現が認められた.特に,Obexレベルより5.1mm尾側の上部頚髄(C_2)後角の刺激側において,コントロール群に比べ有意な増加が認められた.次に,ラットの左眼に光刺激を与え,三叉神経脊髄路核におけるpERK陽性細胞発現を調べたところ,同じくC_2後角にpERK陽性細胞が有意に増加していた.以上より,C_2後角細胞が頭部硬膜起炎刺激(片頭痛)と光刺激の両刺激に関与していると考えられた,さらに,頭部硬膜起炎刺激を茶色で可視化させたc-Fos陽性発現にて,光刺激を青色で可視化させたpERK陽性発現にて調べた.c-Fosタンパクは主に神経細胞の核に認められ,pERK陽性発現は細胞体と樹状突起に認められたことから,一つの細胞において両抗体(抗c-Fos抗体と抗pERK抗体)に対し陽性を示すか否かを判定することができた.すると,C2後角の約50%の神経細胞においてc-FosとpERKの共陽性を示す像がみられた.以上より,C2後角細胞が片頭痛における光過敏症発症に関与している可能性が示唆された.この結果は,光刺激による三叉神経脊髄路核ニューロン活動の変調機構の一端を新たに解明し,片頭痛と光過敏症の治療方法の開発につながることが期待された.以上の結果をまとめ,5つの学会にて口頭及びポスター発表を行い,論文Pain researchに発表した.
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