4週齢前後のSD系ラットを数日間馴化し、ペントバルビタールにより麻酔をしたのちに下顎骨を露出させ、歯科用ラウンドバーを用いて骨を切削し、ピンセットで骨を除去することにより下歯槽神経を露出させ、これを切断することで神経因性モデルの一種である下歯槽神経障害モデルを作製した。神経因性疼痛は坐骨神経のモデル(ベネットモデル、チャンモデル等)が多いが、三叉神経でのモデルは、行動試験の困難さから必ずしも十分には確立していない。そこで本研究では、行動試験に改良を加え、試験の客観性を高めるように特に注意をして研究を行った。その結果、von frey filamentを用いた行動試験において、ラットの視覚等に影響を与えない試験法を開発し、比較的再現性の高い、信頼性の高い行動試験法を確立した。この方法はラットに苦痛を与えることなく三叉神経領域のアロディニアの出現を経時的に評価でき、非常に有用である。また歯科領域における神経因生疼痛モデルの確立に非常に重要であり、槽神経損傷に伴った神経障害性疼痛発現機序の研究に応用できると思われる。 ついで神経切断後に灌流固定を行い、1日後から14日後にかけて、それぞれ三叉神経節を摘出した。これらをクリオスタットにより厚さ約5μmの凍結切片とした。 現在、これらを用いて三叉神経脊髄路核および三叉神経節における、下歯槽神経損傷後のサイトカインと受容体の発現変化を時間的・空間的に調査し、発現細胞の同定を行っている。
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