研究概要 |
Naチャンネルブロッカーであるリドカインの脳保護効果については動物実験において多数の報告がみられる.リドカインはフリーラジカルの産生の抑制や興奮性アミノ酸などの遊離抑制により脳保護効果を示すといわれているが神経再生の面から検討した報告は少ない. 今回,マウス中大脳動脈一過性脳虚血モデルを用いて,虚血操作30分前にリドカイン(1.5mg/kg)および生理食塩水を腹腔内投与し,30分間の致死的虚血負荷を加えた後,再灌流を行った。再灌流5日目に1%2,3,5-TTCに脳切片を浸漬させ,梗塞サイズを比較した.さらに,再灌流5日目に灌流固定を行い脳組織凍結切片を作製し,MAP2,GFAP,Caspase-3,Nestinの発現を免疫組織染色にて評価した.その結果,生理食塩水投与群と比較し,リドカイン投与群において梗塞巣の縮小を認めた.生理食塩水投与群では,梗塞部との境界域において反応性GFAP,nestin陽性細胞の発現が確認できたが,梗塞部ではMAP2,GFAPは完全に脱落した.一方,リドカイン投与群では,虚血部位でMAP2,GFAPの脱落はみられず神経機能は維持されていた.さらに大脳皮質Layer2においてCaspase-3陽性細胞が発現し,アポトーシスの所見がえられた.リドカイン投与群における梗塞部において,脳軟膜(pia mater)からの微小血管周囲にnestin陽性細胞の発現がみられ,一過性脳虚血に対するリドカインの脳保護作用に虚血負荷誘導性神経幹細胞の関与が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予備実験でマウス脳梗塞モデルにおける致死的虚血負荷時間は30分間であることを明らかにした.リドカインをあらかじめ腹腔内投与することで梗塞巣が縮小し,脳保護効果を有することが確認された.現在までに,免疫組織染色によりCaspase-3,さらにはnestin陽性細胞が確認されたことからアポトーシスの関与,神経幹細胞の関与が示唆された.
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