研究課題
本科学研究費助成事業の目的は、口蓋裂患者に上顎前方移動術を適用した場合、鼻咽腔閉鎖機能および構音に与える影響ならびに咽頭軟組織の形態変化について明らかにすることである。研究対象は上顎前方移動術を施行した口蓋裂患者10名(CP群),同様の手術を受けた口蓋裂を伴わない顎変形症患者10名(D群)に加え、新たに本年度は下顎単独手術を施行した下顎前突患者10名(P群)を比較対象に加え検討を行った。方法は、これまで同様、言語機能は、術前、術直後、術後3か月、6か月以降のNasometer によるNasalance Score(NS)および構音障害について評価した。構音は口蓋裂言語に詳しい言語聴覚士が評価した。また、形態的評価は、術前、術直後、術後6か月以降に撮影された側面セファログラムを用い評価を行った。その結果、術前、CP群はD群に比べ有意にNSが高く、軟口蓋長は短かった。また、CP群では術直後、NSの一時的な悪化および構音障害が2例で発言したが、術後6か月時ではほぼ術前の状態まで改善した。上顎移動量とNSの変化量に相関はなく、D群でNSは変化しなかった。歯間音化構音は、ほぼすべての症例で改善した。またP群においても、軟口蓋および咽頭周囲の軟組織の形態変化を認めた。以上の結果から、構音障害の既往がある場合、一時的にでも構音障害を発言する可能性についての配慮が必要であり、歯間音化構音については改善の可能性が示唆された。上顎前方移動量が5mm程度であれば、NSの一時的な悪化を認めるが、6か月程度で改善する事が明らかとなった。また、P群での軟組織の形態変化は、下顎の移動量についても考慮する必要が示唆された。本研究の内容の一部を第71回日本矯正歯科学会(盛岡)にて発表した。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Oral and Maxillofacial Surgery, Medicine, and Pathology
巻: in press ページ: 未定
日本口蓋裂学会雑誌
巻: 37巻 ページ: 210~219