本研究の目的は、顎変形症(偏位咬合)患者の成長期における偏位増悪の有無を明らかにすることである。すなわち、偏位咬合を上下顎骨の形態、位置関係からパターン分けし、各パターンにおいて習慣性咀嚼という負荷により上下顎骨の偏位状態が増悪するか否かを、骨リモデリングをシミュレーションすることにより明らかにしようとするものであった。具体的な本年度の研究実施計画は平成23年に引き続き、平成22年度に選択した被験者の画像データを用いて以下の解析を行うことであった。 ① 偏位咬合パターンにおける骨リモデリングシミュレーションを行う。 ② 偏位咬合パターンにおける習慣性咀嚼(メカニカルストレス)の影響を考察する。 本年度は、平成23年度に明らかにした、咀嚼という習慣性の負荷が上下顎骨形態全体に影響を及ぼしているという3次元有限要素解析の結果をJADRにて発表(研究分担者渡邉)した。また、偏位増悪の過程を明らかにするため、オリジナルの偏位咬合症例のCT画像を用いて、顎骨左右鏡面体を利用した左右対称なモデルを作成し、そのモデルに対し3次元有限要素解析を行った。その結果、オリジナルの3次元画像に対する有限要素解析の結果と比較して、全体的な応力の分布は類似しているものの、特定の部位においてオリジナルとは異なる部位で明らかな応力集中が認められた。この結果から、習慣性咀嚼という負荷により顎変形症(偏位咬合)患者の顎骨偏位が成長期に増悪することが示唆された。
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