研究課題/領域番号 |
22592283
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
稲垣 暁子 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (50527223)
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研究分担者 |
大嶋 隆 大阪大学, 歯学研究科, 教授 (80116003)
仲野 道代 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (30359848)
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キーワード | Streptococcus mutans / Recombinase A / バイオフィルム / Glucosyltransferase / クオラムセンシング / リコンビネーション |
研究概要 |
う蝕の主要病原細菌であるStreptococcus mutansは、口腔内バイオフィルム形成に重要な菌であり、表層に存在するグルカン合成酵素(Glucosyltransferase ; GTF)から粘着性グルカンを合成することでその能力を発揮する。一方、リコンビナヲゼA(RecombinaseA : RecA)は、遺伝子のリコンビネーションをおこすタンパクとして報告されており、S.mutansにおいては、耐酸性やバイオフィルム形成に重要とされる細胞間シグナル伝達システム(クオラムセンシング)に関与する遺伝子の一つである可能性が示唆されている。そこで、本研究では、バイオフィルム形成に最も重要とされるgtf遺伝子の発現とRecAとの関連について調べることとした。リコンビナントRecA(rRecA)を精製し、ゲルシフトアッセイを行ったところ、rRecAとgtf遺伝子との結合が確認された。そこで口腔内のpHが低下し、RecAが過剰発現した際のGTFの発現に与える影響について検討した。rRecAを添加した培養液中でS.mutansを培養後、プレートに播種してコロニー形態を観察したところ、約0.2%の割合において、本来のコロニー形態であるラフ型ではなく、スムース型のコロニー形態を示していた。また、コロニー形態が変化した株を用いて、ウエスタンブロッティングを行った結果、検出されたバンドの位置が、GTFBおよびGTFCのバンドの中間に位置すること、さらにGTF活性が低下していることが確認された。これらの結果から、RecAタンパクが過剰発現する条件下では、gtfB、C遺伝子のリコンビネーションが起こり、活性が低下することによりコロニー形態が変化したと考えられる。この研究の成果は、S.mutansのバイオフィルム形成におけるRecAを中心とする制御システムを解明することに有用であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた計画内容に沿った形で研究が進んでいると考えられる。 今後も現在までに得られた結果に伴い、分子生物学的に実験を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の結果より、RecAが直接的にgtf遺伝子に結合することにより、GTF発現を調節していることが示唆された。また、RecAが過剰発現するような条件下においては、gtfB、C遺伝子のリコンビネーションが起こり、活性が変化することでコロニー形態が変化すると考えられる。今後は特にリコンビネーションが起こる機序に関して更なる検討を行い、口腔内のバイオフィルム形成におけるRecAの役割に関して分子生物学的に検討を行いたいと考えている。
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