全身疾患を有する患児は、その治療のために化学療法や放射線療法を受けていることが多い。さらに免疫機能や唾液流出機能の低下、易感染性を生じ、口内炎を頻発している。そのため通常の歯磨き指導や食事指導、フッ化物塗布による方法で口腔疾病予防の成果を上げるのは極めて困難である。そして入院患者の口腔ケアには齲蝕予防だけではなく、粘膜への対応も不可欠である。 糖アルコールの一種である天然甘味料キシリトールの水溶液をスプレーとして3か月間用いたところ、唾液中および各歯面の歯垢中ミュータンスレンサ球菌(MS菌)数は低値へのシフトを認めた。また、舌背部および頬粘膜部における口腔水分計の数値は改善を示した。 スプレー噴霧によって使用できるキシリトールの一日あたり総量は、効果的な一日量と言われている5~10gよりもかなり少量にならざるを得ない。しかしながら、現時点までで得られた結果としては、口腔水分計ムーカスによって得られた計測値が改善を示しており、口腔粘膜に対して水分量を上昇させる可能性が示唆された。また、MS菌数を計測できるデントカルトSMによるSMスコアの減少も観察され、溶液(スプレーによる噴霧)の形態(媒体)でもキシリトールのMS菌数減少効果が示唆された。
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