研究課題
本年度はブタ顎関節由来培養軟骨細胞を用いたin vitro実験を行い、顎関節軟組織を構成する軟骨組織に対するLIPUS照射の影響を明らかにすることを目的とした。実験動物として、顎関節部の大きいブタを使用する。下顎頭軟骨から軟骨細胞を採取、培養を行い、培養細胞に対して様々な出力のLIPUSを照射し、その影響について検討を行った。(1)健康な軟骨細胞の増殖、基質産生に対する影響について軟骨由来細胞におけるII型コラーゲン、アグリカンなどの軟骨マーカーの遺伝子発現を定量的に比較検討を行ったところ、LIPUS照射により、アグリカン、II型コラーゲン遺伝子発現はいずれも照射12時間後に有意な増加を示した。また、異なる周波数のLIPUSを照射したところ、3MHz照射群ではアグリカン遺伝子発現が有意に増加したのに対し、1MHz照射群では有意な変化を認めなかった。また、LIPUS照射は細胞増殖能に影響を及ぼさないことが明らかとなった。(2)実験的炎症状態下の軟骨細胞におけるLIPUSの影響について培養軟骨細胞に対して、IL-1βを添加し、実験的炎症状態を作製した。IL-1β非添加時において、LIPUS照射はCOX-2遺伝子発現に影響を及ぼさなかったが、IL-1β添加時において、LIPUS照射はCOX-2遺伝子発現の上昇を抑制した。以上のことより、LIPUS照射によりアグリカンなどの基質産生が亢進し、3MHzに周波数が軟骨細胞の基質産生に最も有効であることが明らかとなった。さらに、炎症状態の顎関節軟骨組織において、LIPUS照射はCOX-2を抑制することで有効に働くことが証明された。
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Ultrasound Med Biol
巻: 36 ページ: 907-915