研究概要 |
小児造血幹細胞移植患児は著しい口腔粘膜の炎症を受けQOLが低下するばかりか,口腔常在菌による全身的感染症の危険性もある。また,口腔粘膜障害は疼痛により口腔清掃が困難になり,衛生状態の悪化をきたすことにより,症状が重篤化するケースが少なくない。そのため効果的な口腔ケア方法の確立が急務と言える。 今回,3DSを応用した口腔内除菌システムを試作し,実際の患児の口腔ケアに応用し,患児の唾液に含まれる細菌数を計測することで口腔内除菌効果を評価した。また,NIH作成の有害事象共通用語規準を改変した頬粘膜と歯肉の粘膜炎評価基準を作成し,3DS適応群と対照群の炎症状態を比較した。その結果,対照群の唾液中に含まれる細菌数はほとんど変化しなかったのに対し,3DS適応群では有意に細菌数の減少が認められた。また,対照群では粘膜状態にほとんど変化が認められなかったが,3DS適応群では粘膜炎が優位に改善した。 このことから,小児造血幹細胞移植患児への3DSを応用した口腔ケアの口腔内除菌効果と,粘膜炎の予防効果が示唆された。今後,さらに口腔内常在菌の除去が粘膜炎症を軽減させるメカニズムをin vivoの実験にて明らかにする。
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