1.免疫組織学的手法による痛覚神経細胞内へのQX-314の取り込みの判定について ① TRPV1の効果について:ラットの足底部に、カプサイシンとQX-314(蛍光色素標識)を同時に投与した。投与1ヶ月後、ラットの後根神経節(L4、L5、L6)を摘出した。摘出した神経節の凍結切片を作成し、蛍光顕微鏡で観察した。切片の神経細胞に蛍光色素が取り込まれているかを検証した。その結果、小型から中型の神経細胞に蛍光色素が取り込まれていた。② TRPA1およびTRPM8の効果について:切片の神経細胞に蛍光色素が取り込まれていなかった。 2.動物の行動評価によるカプシエイトとQX-314およびアナンダミドとQX-314の併用投与の麻酔効果について QX-314を効果的に痛覚神経に送り込むには、カプサイシンを利用することが良いことが分かった。しかし、カプサイシンにはそれ自身が痛みを引き起こすという欠点がある。そこで、本実験では辛くない唐辛子の成分であるカプシエイトおよびTRPV1の内因性リガンドであるアナンダミミドをカプサイシンの代わりに使用して、QX-314を痛覚神経に送り込めるかどうかを熱刺激を用いた動物行動学的手法を用いて検討した。その結果、カプシエイトでは投与後10分から5時間までの間、コントロール群に比べて麻酔効果が有意に見られた。一方、アナンドアミドでは、投与後1時間から3時間の間に麻酔効果が見られたが、カプシエイトに比較すると効果は少なかった。 3.カプザゼピン(TRPV1の阻害剤)による麻酔作用の抑制効果について QX-314を効果的に痛覚神経に送り込むには、TRPV1を利用することが良いことが分かった。そこで、TRPV1の阻害剤であるカプザセピンを事前に投与すると、カプサイシンとQX-314の併用投与による麻酔作用を阻害することができた。
|