実験動物の下顎運動を3次元的にとらえるため,標点にチップコイルによる電磁石を応用するシステム開発を行ったが,コイルのオンオフによって磁場が不安定になるため,充分な計測精度が得られなかった.そこで,顎運動計測には,標点を1点の磁石で行うシステムに変更し,下顎頭の負荷を咬合を大幅にかえることによって行った. 不正咬合動物モデルとして,マウスを利用し,5週齢時に下顎側方誘導用の矯正バンドを下顎切歯に装着固定し,成長のピークが過ぎる15週齢時まで10週間,2週ごとに下顎骨形態データの収集を行った.さらに,15週齢時に顎運動及び筋機能解析システムを装着し,咀嚼時の機能計測を行った. 形態では下顎骨は,外見的には成長に伴って大きく変形したが,下顎骨骨体の変形は少なく,正常マウスとの有意差は認められなかった.しかしながら,顆頭の形態は正常マウスとの有意差が認められた.また,顎機能の面では,顎運動の周期を示すTotal cycle lengthや開口時を示すOpening phase,さらに,初期閉口時を示すEarly closing phaseが正常マウスに比較して有意に長くなった.しかしながら,実際に交合する部分を示すLate closing phaseは正常マウスと比較して有意差はなかった.不正咬合マウスは,咬合部分が障害を受けているにもかかわらず,Late closing phaseに変化が見られなかったのは興味深い結果となった.
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