本研究の意義は、顎関節領域では先行研究の存在しない、OAへのasporinの関与について明らかにすることで、顎関節症の一因を新たに解明することである。今年度まで、automatic pulling machineを用いたラット下顎受動開閉口運動の負荷頻度・大きさの実験条件を様々に設定し、屠殺後の顎関節矢状断切片に対してtoluidine blue染色を行ってきた。それにより、下顎頭軟骨の形態変化について評価してきたが、思うような結果が得られず、条件の設定に困窮した。そこで、以前より我々の研究グループで用いてきた実験モデルをmodifyし、片側顎関節に一定の侵害刺激を与え続けるモデルを作製し、同様の手法で観察、評価した。5週齢にて片側咬筋を切除し、2週後、4週後にて顎関節の組織学的評価を行った。 先ず、乾燥頭蓋標本を作製し、実験群下顎頭の明らかな形態変化を確認した後、下顎頭軟骨下骨の詳細な変化を探るべく、micro-CTを用いた3次元骨形態計測を行った。その結果、顎関節への負荷が減少した部位における下顎頭海面骨の骨体積、骨密度の減少が認められた。その後、通法に従い6μm顎関節矢状断パラフィン切片を作製、中央部の切片に対してtoluidine blue染色、下顎頭軟骨におけるTGF-b1およびasporinの免疫組織化学染色を行ってきた。これらの成果は、2013年6月に行われる、89 th Congress of the European Orthodontic Societyにて発表予定である。 また、研究実施計画に記載した顎関節円板の性状測定についても今後併せて行っていく予定であり、関連論文について現在投稿中である。 本研究の結果、顎関節OAとasporin過剰発現との関連性が明らかにされれば、顎関節症の一因解明の一助となり得よう。
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