研究概要 |
本研究は、歯根表面および歯根周囲組織におけるRANKL-ケモカインの動態が歯根吸収に関与しているとの仮説を立て、in vivoではラットを用いた実験的歯根吸収モデルにて免疫組織化学染色法でRANKL, cytokine-induced neutrophil chemoattractant/CINC-1、CXCR2ならびにMCP-1の発現を検討した。また、In vitroではhPDL cellsを用いた歯の圧迫側モデルにてRANKL, IL-8およびMCP-1の遺伝子発現およびタンパク質産生を、またラット破骨前駆細胞を用いてCINCとMCP-1による破骨細胞形成能と骨吸収能に与える影響を検討した。 その結果、In vivoにおいて10および50 g群間に歯の移動量の計測では差は認められなかった。10 g群ではセメント質の吸収は認められなかったが、50 g群では7日目にセメント質の吸収と吸収窩におけるTRAP陽性破歯細胞の出現を認めた。また、50 g群では10 g群と比較してRANKL, CINC-1陽性細胞、CXCR2陽性細胞およびMCP-1陽性細胞の増加を認めた。In vitroにおいて、hPDL cellsのRANKL, IL-8およびMCP-1の遺伝子発現量は、6時間をピークに加重依存的に増加し、それらの産生量は経時・加重依存的に増加した。ラット破骨前駆細胞においてCINC添加群ならびにMCP-1添加群はcontrol群と比較して、TRAP陽性細胞数は増加した。またPit formation assayにおいてCINCまたはMCP-1添加群は、象牙質吸収能の促進を多く認めた。 以上の結果から、RANKL, IL-8(CINC)およびMCP-1は過度の矯正力により歯根膜細胞から多量に産生され、破歯細胞分化を促進することにより歯根吸収を発生させる可能性が示唆された。
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