我々の今までの研究で、歯根膜細胞にメカニカルストレス(MS)を加えてもRANKL発現は亢進せず、骨芽細胞へのMS負荷では強い発現の亢進が認められた。そこで、矯正力に応答した骨吸収には、骨芽細胞の産生するRANKLが重要な役割を演じると考え検討してきた。昨年度は歯根膜細胞に荷重を加えると産生が亢進するPGE2 (10-5~10-11M)を、ヒト歯根膜細胞と骨芽細胞に添加してRANKL発現と共に、RAW264.7細胞との共培養による破骨細胞様細胞形成能を調べた。その結果、骨芽細胞のみで濃度依存的にRANKL発現と破骨細胞様細胞形成能が増大した。また、OPG、M-csf発現についても検討した結果、歯根膜細胞で多量に発現しているOPGと、骨芽細胞で多量に発現しているM-csfはPGE2濃度依存的に減少しており、両細胞は異なった役割を有していると考えられ、上記RANKLと合わせて報告した (Arch Oral Biol 57)。 今年度は同個体からの骨芽及び歯根膜細胞を用いてMSとの関連性の検証を行っている。小臼歯歯根膜から得た歯根膜細胞にMSを加え、そのconditioned medium(CM)を採取した。別に培養した同個体の歯根膜細胞及び第三大臼歯抜歯時に得た歯槽骨からの骨芽細胞にCMを添加しRANKL発現を調べた。その結果、歯根膜細胞にMSを加えたCMを添加するとRANKL発現はわずかに増加したが、骨芽細胞ではCM添加により顕著に増大した。この増大がPGによるものかを検証するために、COX-2特異的阻害剤であるNS398を添加した系で同様の検討を行っているが、明瞭な結果はまだ出ていない。また、CMを加える系でRAW264.7細胞との共培養を行い、破骨細胞様細胞の形成能を検討する予定である。
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