研究概要 |
現在までに、歯科矯正学的牽引時における歯周組織の早期変化、ならびに骨髄幹細胞の多分化能に関する研究を行ってきた。歯科矯正学的牽引時にける歯周組織の変化では、牽引1時間以内で牽引則において歯根膜線維芽細胞および骨芽細胞にRunx2、 Msx2、 ALP蛋白の局在と強いシグナルを確認した。骨髄幹細胞の歯牙構成細胞への分化能に関する研究では、GFPマウス骨髄細胞移植実験系において、骨髄幹細胞が骨芽細胞、破骨細胞、歯根膜線維芽細胞、および歯髄細胞に分化することを確認した。 骨髄幹細胞は歯牙組織及び歯周組織を形成する全ての細胞への分化能を有しており、骨髄幹細胞を用いた歯科矯正学的治療応用への可能性を示している。そこで,今回,歯科矯正学的牽引時の歯根膜組織に対するメカニカルストレス付与の結果、骨髄幹細胞が骨芽細胞や破骨細胞に分化誘導され、また歯根膜のリモデリングにも同幹細胞が強く関わっているとの発想に至り,これら一連の歯牙牽引時における骨髄幹細胞の機能解明を行ったところ,このメカニカルストレスによって積極的にリモデリングの盛んな部位に骨髄幹細胞を供給することができる可能性が示唆された。したがって、効率的な「歯の移動」が可能になると考えられる。また申請者らはG-CSFが骨髄幹細胞の組織生着率を増加させる現象も確認しており、高い確率で新規歯科矯正学的治療法の開発が可能であると考えている。 なお,2010年に得られた結果は,2011年11月に行われる第20回国際口腔顎顔面外科学会(ICOMF)にて報告する予定である。
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