研究概要 |
平成22年度に,これまで確立されていなかった咬合力、粉砕能力に加え、食塊形成、奥舌への移送に関連する舌と口唇の関連について、嚥下を含めた咀嚼能力の評価方法を正常咬合者で確立した.今年度は,不正咬合者でこれらの評価法を用いて、顎顔面形態との関連を検討した.その結果以下の結果と考察が得られた. 1.20回粉砕度は個性正常咬合が骨格性I,II,IIIに比べて有意に大きい値を示したことから、骨格性I級、II級、III級は正常咬合者に比べ、20回咀嚼で効率の悪い咀嚼が行われていると推察された。これは、唾液量、咬合力、咬合面積、口唇閉鎖力について4群間で有意差は見られなかったことから、20回咀嚼における骨格性I級、II級、III級の効率の悪い咀嚼は、従来から報告されている不規則な咀嚼パターンが関連している可能性が推察された。 2.嚥下までの咀嚼回数は骨格性III級が骨格性I級、骨格性II級に比べて有意に少ない値を示し、咀嚼時間は骨格性III級が骨格性I級に比べて有意に少ない値を示した。さらに、嚥下直前粉砕度は骨格性III級が個性正常咬合に比べて有意に小さい値を示した。これは、骨格性I級とII級では20回粉砕後から嚥下までの間に代償性の咀嚼が行われているのに対し、骨格性III級ではピーナッツを十分に咀嚼せずに嚥下している可能性が示唆された。 以上の結果より,20回粉砕度は個性正常咬合が骨格性I,II,IIIに比べて有意に大きい値を示した。嚥下までの咀嚼については、骨格性I級、II級は咀嚼回数の増加によって嚥下直前までに食片を細かく磨り潰しているのに対し、骨格性III級は咀嚼回数、咀嚼時間が少なく、嚥下時に食片を細かく磨り潰していないことが示された。一方、個性正常咬合は咀嚼中期から嚥下直前までに食片を細かく磨り潰していることが示された。
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今後の研究の推進方策 |
平24年度には,当初の計画通り,平23年度まで得られてデータを元に結果をまとめ,その後日本矯正歯科学会大会に発表後,論文として発表する予定である.
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