研究分担者 |
渡部 昌実 岡山大学, 岡山大学病院, 准教授 (70444677)
成石 浩司 岩手医科大学, 歯学部, 准教授 (00346446)
峯柴 淳二 岡山大学, 岡山大学病院, 講師 (00509383)
大森 一弘 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (20549860)
高柴 正悟 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (50226768)
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研究概要 |
正所性マウス前立腺がん転移モデルを作成するために,正常マウスの歯周病感染モデルを作成し,歯周病細菌Porphyromonas gingivalisの曝露接種回数の違いを慢性感染の指標とし,感染頻度によってマウス生体反応がどのように変わるかを調べた。 マウス歯周病感染モデルの構築:9週齢オスのBALB/cマウスP.gingivalis W83生菌を一回につき2.5×10^8の量で右肢皮下接種した。接種の回数をAグループ4回,Bグループ2回,Cグループ1回とグループ分けした。陰性対照としてDグループをPBS1回接種したマウスとした。複数回接種は間隔を一週開け,最後の一回の接種タイミングを全てのグループで合わせ,その後標本を採取した。また最後の接種後2日後に菌量1.0×10^9のP.gingivalis生菌を接種しその後の体重,生存率を14日後まで調べた。体重はグループ間で有意な差が無かったが,生存率では事前に4回接種していたAグループがCグループに比べ生存率が有意に高かった。BグループはA,Cの中間の生存率であった。 組織学的観察:最後の接種後24時間後にグループの中の一部のマウスの接種部位の皮膚と肝臓を採取し固定後パラフィン包埋し切片を作成,ヘマトキシリン・エオジン染色の後に検鏡した。C,Dグループのマウスは皮膚の局所炎症が組織学的に認められなかったが複数回接種したA,Bグループでは肉眼的観察でも組織学的観察でも局所の炎症反応が確認できた。肝臓では逆に複数回接種したAグループでは白血球の組織浸潤がごくわずか見られたの比べて接種の回数が少なかったCグループでは肝細胞が肥大化し血管新生が見られた。 血清IL-6濃度測定:最後の接種後12時間と24時間後,48時間後に血液を採取し,血清に存在するIL-6の濃度をELISA法で測定した。細菌接種1回のCグループでIL-6濃度の上昇が著しく,4回接種したものは陰性対照Dグループと有意な差が無かった。 以上の結果から細菌の曝露回数によって生体の局所と全身での反応はそれぞれ異なることが示唆された。回数が多いほど感染局所の反応性が高くなり,全身的には曝露に対する反応が小さくなることが示唆された。慢性感染状態にあるマウスは全身的に生体反応性が低くなっており,癌の転移という感染以外の侵襲に対しても反応が異なるかどうかを来年度以降明らかにしていく予定である。
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