研究概要 |
歯周病と全身疾患の関連について以前より指摘されているが,未だ詳細は不明である.さらに近年,歯周病の存在とメタボリックシンドロームの関連を臨床的に指摘する報告が多く出されている.そこで我々は,歯周病とメタボリックシンドロームの関連について実験的に直接証明する目的で,ラットに実験的歯周病を誘導し,全身状態に対する影響を検討した.5週齢の雄性Sprague-Dawleyラットをコントロールラットと歯周病誘導ラットの2群に分け,歯周病誘導ラットに対し両側上顎第2臼歯に絹糸を巻きつつけ,プラークの停滞しやすい環境を人工的に作ることにより,歯周病を誘導した.歯周病の状態については,病理組織real time PCR法による遺伝子発現,マイクロCT撮影による歯槽骨吸収測定により評価した.実験的歯周病惹起2週間後の評価では,(1)HE染色により歯周病側の歯肉における炎症性細胞浸潤が著明に増加していること,(2)歯肉における遺伝子発現の検討により,歯周病側において炎症性サイトカインであるTNF-α, iNOSの遺伝子発現が有意に増加していること,(3)マイクロCT撮影により歯周病側の歯槽骨が吸収されていることを確認した.全身状態を確認する目的で,コントロールラットおよび歯周病誘導ラットの体重,血糖について検討したところ,実験的歯周病惹起2週間後の体重および血糖はともに有意差を認めなかった.現在,血清学的検討,新たな遺伝子発現について,検討を進めている.
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