研究課題
研究目的:口腔の健康格差は、国際歯科学会(IADR)でも研究議題とされ、注目を集めている。また、口腔と全身の健康もその重要性が認識されている。そこで、1)口腔の健康格差と2)口腔と全身の関連、の研究を行った。研究方法:研究1)所得格差と口腔及び全身の健康の関連の研究マルチレベル分析により、所得格差と、口腔の健康(歯の数が19本以下かどうか)および全身の健康(主観的健康感)の関連を3451名のデータベースを用いた横断研究で検討した。研究2)口腔の健康が死因別死亡に及ぼす影響の研究ベースライン時の口腔の健康(歯の数が20本以下かどうかと噛めるか)が、4年後の3種類の死因別死亡(癌、循環器系疾患、呼吸器疾患)に与える影響について、生存分析を用いたコホート研究で検討した。研究結果:研究1)所得格差が大きい地域に住んでいる人は、主観的健康感が悪い危険性が1.39倍、歯の本数が少ない危険性が1.86倍高かった。また、所得格差の主観的健康感への影響を、ソーシャルキャピタルが16%和らげた。研究2)歯が少なくよく噛めない人は、循環器系疾患や呼吸器系疾患による死亡の危険性が、それぞれ80%以上高かった。口腔の健康と癌の関連は、媒介因子により説明された。癌は、種類により発生メカニズムが異なるため、歯の状態が影響しないガンも存在することが有意差の認められなかった理由の可能性があり、ガンの種類別の研究が必要だろう。結論:所得格差が、口腔の健康に関連していることが示された。また、不良な口腔の健康は、循環器系疾患や呼吸器系疾患の死亡リスクを高めた。
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