研究課題/領域番号 |
22592329
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
杉本 久美子 東京医科歯科大学, 歯学部・口腔保健学科, 教授 (10133109)
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研究分担者 |
遠藤 圭子 東京医科歯科大学, 歯学部, 准教授 (70270915)
吉田 直美 千葉県立保健医療大学, 健康科学部, 教授 (50282760)
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キーワード | 高齢者 / 口腔ケア / アミラーゼ活性 / 自律神経活動 / 味覚閾値 |
研究概要 |
高齢者では、様々な要因によって唾液分泌の減少や味覚の低下が起こることが多く、その状態を改善しQOLを高めるうえで、歯科衛生士による専門的口腔ケアが重要であり、その客観的有用性評価が本研究の目的である。そこで、本年度は、専門的口腔ケアの内容を検討し、口腔ケアによる情動変化の検出を確実にするために、自立高齢者を対象として、歯科衛生士による口腔ケアを行い、ストレス指標とされる唾液アミラーゼ活性の測定および心電図解析による自律神経活動の分析を行った。加えて、口腔ケアの前後で味覚の認知閾値を測定し、味覚への口腔ケアの影響についても検討した。口腔ケア終了後の唾液アミラーゼ活性は、ケア前に比較して低下した被験者が多く、口腔ケア全体としてストレスを軽減させる可能性が示唆された。口腔ケアの各内容別に、自律神経活動の変動を検討した結果、歯科衛生士との会話中および唾液腺のマッサージ中に、ほぼ全被験者で副交感神経活動が高まっており、これらの介入が対象者にリラックス感を与える可能性が示唆された。一方で、歯間ブラシによる清掃中は、ほとんどの被験者において交感神経活動の上昇が認められ、スポンジブラシによる舌や粘膜の清掃中の自律神経活動の変動では一定の傾向が認められなかった。このことは、これらの介入が被験者に緊張感あるいは不快感を生じた可能性を示唆するが、要因としては、被験者が自立高齢者であり、他者から口腔清掃を受けた経験がないことから、これらの介入時に緊張感あるいは違和感を生じた可能性がある。口腔ケアの味覚への影響については、うま味で閾値低下の傾向がみられたものの、甘味、塩味には変化がみられなかった。以上の結果を総合すると、今回実施した口腔ケアの内容は、リラックス感を生じるなどの効果があり、適切であると判断された。また、自律神経活動の分析から情動の推測が可能であることが確認された。
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