研究概要 |
小児の歯垢バイオフィルムの細菌動態をモニタリングするシステムを開発することを目的とした。その1つとして、蛍光フィルター法による細菌の定量的解析を行った。口腔サンプルを採取し、蛍光試薬およびポリカーボネート製メンブレンフィルターを用いて、生菌数を計数した。同時に嫌気培養を行い、生育した細菌数を求めた。蛍光フィルター法によって、10の5乗程度のCFUが得られた口腔サンプルの場合、嫌気培養でも同程度の細菌数が得られた。このことから、蛍光フィルター法は、歯垢バイオフィルムの細菌動態をモニタリングするシステムとして利用可能と考えられた。 一方、齲蝕発症のモデルとして利用されることの多い、げっ歯類のプラーク常在菌叢について解析した。生後3週齢および6週齢のICRマウスを用いて、深麻酔下にて上顎第一臼歯を抜去し、緩衝液1.0 mLに浸漬し、健全な歯面上に付着している細菌を浮遊させ、培養用の試料とした。同緩衝液によって希釈し、CDC血液寒天平板に接種し、嫌気および好気培養し、CFUを求めた。1枚あたり50個以下のコロニーが形成された平板上の全てのコロニーからgenomic DNAを抽出後、16S rRNAのユニバーサルプライマーでPCR増幅した。得られたPCR産物を精製し、シークエンスを解析後、NCBIのBLAST search programを用いて、細菌種を同定した。3週齢マウスプラークの嫌気および好気培養によるCFUは、平均(8.88± 11.4)×10の5乗および(7.53± 13.2)×10の5乗であった。優勢菌は、Enterococcus Escherichia, Lactobacillus, Lactococcus,Clostridiumであった。マウスプラークの細菌構成が明らかとなったことにより、小児の齲蝕発症モデル実験のため一助となると考えられた。
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