本研究は,粘液産生に関係する遺伝子MUC1の口腔粘膜における発現機構の解明と細菌感染防御との関係を明らかにすることを目的としており,本年度は,前年度に引き続いてヒトMUC1遺伝子を導入した細胞の作製ならびにその細胞を用いた細胞障害性実験の検討を以下のとおり実施した。 1.遺伝子導入細胞の作製 pCMV6-MUC1を遺伝子導入用カチオン性脂質Lipofectamine を用いてHeLa細胞,Raw細胞に遺伝子導入を行った。コントロール用に空ベクターであるpCMV6-Entry vectorの導入も行った。トランジェントトランスフェクションと同時に,ステーブルトランスフェクションも行い,遺伝子安定発現株の確立も試みた。安定株の確立には何らかの阻害がかかっている可能性があると考えられた。 2.遺伝子発現の確認 トランジェント遺伝子導入細胞からRNAを採取し,MUC1特異的primerとプラスミドベクター特異的primerを用いたPCRにより,導入遺伝子の確認を分子生物学的に行った。さらに,蛋白質レベルでの発現確認のために,プラスミドベクターのタグであるDDKに対するanti-DDK monoclonal antibodyを使用してwestern blottingを行った。 3.感染ならびに細胞傷害性実験 歯周病原性細菌の産生する毒素を用いた細胞障害性実験のために,遺伝子組換え大腸菌またはリコンビナント CDT (cytolethal distending toxin)を精製分離した。トランジェントトランスフェクション細胞を用いて細胞傷害性実験を行った。アッセイ系の至適条件の検討ならびにCDT濃度の検討結果に基づいて実験を行った。HeLa細胞については細胞傷害性の結果を得ているが、Raw細胞は活性の測定系を確立中である。
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