研究課題/領域番号 |
22592336
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
伊藤 博夫 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (40213079)
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研究分担者 |
佐野 茂樹 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (20226038)
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キーワード | 口臭検査 / 歯周病 / 有機化学 / エルマン試薬 / チオール捕捉反応 / ハイスループット処理 |
研究概要 |
対称ジスルフィドである5,5'-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)とチオール類との反応性を利用し、チオール-ジスルフィド交換反応によって生成する5-チオ-2-ニトロ安息香酸を412nm付近の可視吸収スペクトルにより検出するチオール類の比色定量法は、エルマン法として知られている。しかしながら、エルマン試薬のカルボキシル基にリンカーを介して汎用蛍光発色団を導入した鎖状および環状の各種誘導体は、チオール捕捉標識反応剤として好ましくない物性(溶解性等)を示すことが明らかとなった。そこで、エルマン試薬からニトロ基とカルボキシル基を除去し、ジスルフィド結合のオルト位にヒドロキシメチル基を導入した構造を基盤として新たな誘導体合成を実施した。その結果、1分子の母核ジスルフィド化合物にエステル結合を介して2分子のピレン構造を導入した誘導体において、問題点であった溶解性等の物性が大きく改善された。さらに、ドデカンチオールやプロパンチオールとの反応は、テトラヒドロフラン中トリエチルアミンの存在下に5分以内で定量的に進行することが明らかとなった。メチルメルカプタンとの反応を考慮し、反応条件を検討した結果、テトラヒドロフランと水の1:1混合溶媒中、炭酸カリウムを塩基として用いた場合にも、プロパンチオールとの反応は5分以内に定量的に進行した。さらに、生成した混合ジスルフィドの高速液体クロマトグラフィー分析(検出波長:344nm)において、混合ジスルフィドの濃度と検出装置のピーク面積は良好な直線性を示すことが確認された。今後は、上記チオール捕捉標識反応剤を用いたメチルメルカプタンの捕捉実験を実施するとともに、本母核構造を基盤として2個のピレン骨格を組み込んだ環状ジフェニルジスルフィド型チオール捕捉標識反応剤の合成を実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度に計画していた「揮発性チオール(メチルメルカプタン)の液相中への捕捉反応」を検討するには至っていないが、良好な物性を示すピレン残基含有ジフェニルジスルフィド誘導体の合成に成功した。さらに、本化合物はテトラヒドロフランと水の1:1混合溶媒中において、ドデカンチオールやプロパンチオールと短時間で定量的に反応し混合ジスルフィドを与えた。したがって、メチルメルカプタンの捕捉反応にも十分に適用可能であると予想されることから、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後はより高感度なチオール捕捉標識反応剤(モノマー/エキシマースイッチング分子)の開発を目的とし、前年度に合成した鎖状のピレン残基含有ジフェニルジスルフィド構造を基盤とした環状ジフェニルジスルフィド誘導体を合成する。本誘導体では、チオールとの反応により環状構造が開環した場合にのみエキシマー蛍光を発することが期待される。さらに、前年度に合成した鎖状ジフェニルジスルフィド誘導体とともに「揮発性チオール(メチルメルカプタン)の液相中への捕捉反応」を検討し、口臭検査用試薬としての有用性を明らかにする。
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