今年度はまず、齲蝕未経験群および齲蝕経験多発群から分離されるGemella属(前回まで特許申請の関係上、X属と記載していた)について、プラーク形成初期(1日目あるいは2日目)、中期(4日目)、後期(7日目)のプラークにおける両群の菌種の違いを詳細に調べた。プラーク中のGemella属の分布割合はすでに報告したとおり、5日まで齲蝕未経験群で高い傾向が見られ、2日目と4日目に有意差が認められた。7日目になると両者の間にGemella属の分布割合の違いはなかった。菌種については、齲蝕未経験群では、プラーク形成過程を通して、G. haemolysansがGemella属全体の90%以上を占める者が9名中8名存在した。齲蝕経験多発群では初期のプラークについては10名すべてからG. haemolysansが90%以上検出されたが、4日目に5名、7日目には4名に減り、G. morbillorumとG. sanguinisが比較的多量に認められようになった。以上の結果より、Gemella属に関しては分布割合のみでなく、菌種構成も両群で著しく異なることが明らかになった。 次に、う蝕細菌であるStreptococcus mutansの生育に対するGemella属の影響を調べた。Gemella属の標準株3菌種はどれもS. mutans UA159株に対して生育阻害を示さなかった。一方、S. mutansはG. morbillorum ATCC27824に対して生育阻害を示したが、G. haemolysans ATCC 10379およびG. sanguinis ATCC 700632の生育には影響しなかった。また、Gemella属3菌種間に阻害効果は認められなかった。さらに、被験者より分離したGemella属菌種とS. mutansについて生育阻害効果を調べたところ、標準株と同様の結果であった。
|