ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)において歯周病原細菌の病原因子のひとつであるPgのLPSがiNOSを誘導し、産生されたNOが内皮細胞層の連続性を低下させることが報告されている。また、臨床研究では、心血管障害の患者において歯周病がNOの生理活性の低下による血管内皮機能障害のリスクファクターであることが報告されている。 本研究では、血管内皮機能制御の中でこれまでに歯周病との関連が明らかでないRhoキナーゼをメディエーターとした歯周病と血管内皮機能障害の相互作用に焦点をしぼり以下について実施した。 具体的には歯周病原細菌由来のLPSおよび菌体の暴露が、血管内皮細胞でRhoキナーゼ活性の変化、Rhoキナーゼアイソフォーム間の活性の差異、下流の遺伝子発現、たとえば、トロンビンによって誘導されるICAM-1やNO産生に重要なeNOSおよびiNOS発現について検討した。 歯周病原細菌Porphyromonas gingivalis由来LPS刺激でHUVECおよび大動脈内皮細胞(HAEC)では無刺激の内皮細胞と比較してeNOSおよびiNOSは転写レベルおよび翻訳レベルでの発現が促進される傾向がみられた。 これらの内皮細胞をF-actinを免疫染色し、細胞間ギャップ形成や膜ラッフル形成状態を観察したところ、P. gingivalis LPS刺激で形成促進される傾向が観察された。 現在、LPS刺激の有無によりHUVECおよびHAECのeNOSおよびiNOSのリン酸化が関与しているのか、またeNOSおよびiNOSの発現を阻害した場合の分子動態や形態変化について解析中である。
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