実験的重症筋無力症(MG)ラットの摂食・嚥下機能の解析法を新たに確立して研究を行った。重症筋無力症ラットの嚥下機能の解析のためにアセチルコリン受容体モノクロナル抗体、mAb35(150~320μg)をエーテル麻酔下に尾静脈から静注してMG群を作成し、対照群と比較検討した。計測項目は、初回嚥下時間(食物の取り込み開始から初回嚥下開始までに要した時間)、連続嚥下時間(連続する2回の嚥下動作において嚥下開始から次の嚥下開始までに要した時間)、咽頭・食道通過時間(嚥下開始から食塊が胃に達するまでに要した時間)、ならびに連続嚥下時間における咀嚼回数とした。 正常ラット5匹(正常群)の計測結果(平均値±SD)は、初回嚥下時間3.01±1.14秒、連続嚥下時間3.52±0.23秒、咽頭・食道通過時間2.00±0.27秒であった。連続嚥下時間における咀嚼回数は15.6±0.02回であった。mAb35を投与した2匹に関しては48時間後に軽度なMG(K. Poulasの分類1)を発症した(MG群)。MG群の結果は初回嚥下時間30.49±14.69秒、連続嚥下時間6.40±1.66秒、咽頭・食道通過時間1.99±0.08秒であった。連続嚥下時間における咀嚼回数は23.3±1.41回であった。MG群の初回嚥下時間および連続嚥下時間は、正常群のmean±3SDと比較して明らかに延長した。また、連続嚥下時間における咀嚼回数に関しても、正常群のmean±3SDより高値を示した。ラットの嚥下造影法を用いて、MGラットの摂食・嚥下機能評価を行いMGラットでは正常ラットと比較して摂食・嚥下機能が著明に低下していることが示された。ラットの嚥下造影法は摂食・.嚥下機能の研究モデルとして有効であると考えられた。本研究の基礎データから本実験方法が、MG患者の嚥下障害の機序を検討する動物モデルとしてさら発展的研究になる可能性があると考えられた。
|