日常私達が食事を摂るために必要不可欠である咀嚼運動が、老化防止にどのような波及効果があるのか明らかにするため、雄性ウィスターラットを固形食(組成343.1kcal中水分9.3%蛋白質25.1%脂肪4.8%炭水化物50%)または流動食(組成101kcal中水分73.2%蛋白質4.7g脂肪1.5g炭水化物18.0g)で飼育を行い、全身のエネルギー代謝の解析を行うと同時に内臓脂肪と脳視床下部の組織抽出を行った。エネルギー代謝においては以下の結果を得た。 (1)流動食を摂取したラットの方が最終的な摂取カロリーが高かった。 (2)流動食を摂取したラットの方が体重増加が大きかった。 (3)流動食を摂取したラットでは血糖値に明らかな上昇が認められた。 流動食には水分が多く含まれるため一時的には食事は中断されるが、すぐにお腹が空くため再度摂食する傾向にあり、1日の摂取カロリーは高くなった。また体重は摂取カロリーに伴って増加したがそれ以上に増加する傾向にあった。血糖値の異常亢進はインスリン感受性低下を示唆するものであり、ラットの体重増加と摂取カロリーを加味して考察すると、わずか2~3週間の咀嚼の違いによって、血中脂肪の脂肪組織への沈着促進や脂肪合成の亢進をきたし、肥満を引き起こしていると推測できる。また過食傾向になっている点から摂食中枢へのインスリン関与も推察できる。本年度は、インスリンを含めた種々の血清ホルモン量を測定し、咀嚼が摂食関連ホルモンの均衡をどのように破綻させるのか検討するとともに、咀嚼運動により変動する脳内発現遺伝子の解析を行っていく。
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