研究課題/領域番号 |
22592340
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研究機関 | 別府大学 |
研究代表者 |
仙波 和代 別府大学, 食物栄養科学部, 准教授 (30381031)
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研究分担者 |
伊達 紫 宮崎大学, フロンティア科学実験総合センター, 教授 (70381100)
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キーワード | 咀嚼 / 抗老化 / 生活習慣病 / ホルモン / 慢性炎症 |
研究概要 |
一昨年の研究結果より、固形食ラット群と流動食ラット群では、体重差・摂取エネルギー差が認められると同時に血糖値の変化が有意に認められた。そこで昨年度は、摂取エネルギーを均一にし、固形食ラット群と流動食ラット群で、血糖値に関与するホルモンがどのように変化しているのか以下のように実験を行った。 <実験方法> 5週齢のwister雄ラットを固形食群と流動食群に分け、制限給餌法(午前9時から12時までの3時間のみ餌を与える)にて9週間飼育を行った。この間、体重測定と摂取カロリーの算出を行った。9週後に食後30分後と60分後に採血・血清分離を行うとともに、脂肪組織をはじめとする各組織を取り出し、RNA抽出を行った。 <結果> 1. 摂取カロリーには全く差が無かったにもかかわらず、飼育1週目より、流動食群の方が固形食群に比較して有意な体重増加が認められた。 2. 9週目において、食後の血糖値を測定すると同時に、ELISA法にて血清中のインスリン、CCK、PYY、GLP-1の測定を行った。固形食群に比較して流動食群の方が有意な高血糖値を示すと同時に高インスリン値が認められた。CCK,PYY,GLP-1に関しては有意な差は認められなかった。 4. 流動食群と固形食群の内臓脂肪中のPPAR-γ、TNF,MCP-1の遺伝子発現をreal time-PCRにて測定を行った。全てにおいて、固形食群に比較して流動食群の方が有意な増加が認められた。 <結果> 咀嚼低下では、容易に内臓に脂肪を蓄積すると同時に慢性炎症を惹起する。その結果インスリン抵抗が生じ高血糖の状態に陥りやすい。またこの状態が長期継続すれば、糖尿病を誘発し、高血圧、腎不全、心筋梗塞などのいわゆる生活習慣病となる可能性が高くなることが推察できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
途中で所属研究機関を移動したため、新機関での研究セットアップに時間がかかり若干遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題における今後の研究計画として、以下の実験を行う予定である。 1.固形食群と流動食群における視床下部のDNAマイクロアレイ:咀嚼運動により変動する一連の遺伝子群に違いがあると推察できる。よって標的分子の探索を行う。 2.学習・記憶に関する評価:咀嚼低下が実際にどれくらいの学習・記憶低下をもたらすのか古典的な行動様式記録方法を用いてラットで実験を行う。しかしあまり医学的な実験には使用されていないため器具類等が入手できない点が問題である。自作で行うか、または代替実験として咀嚼時のヒトの脳波測定を行う。
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