咀嚼に関する脳への影響を調べるために、2年間で得た知見の再現性の確認と行動解析実験を行った。 1.体重への影響 <方法>7週齢のwister雄ラットを固形食群(5匹)と流動食群(5匹)に分け、10週間飼育を行った。この間体重測定と摂取カロリーの算出を行った。<結果>6週目を境に軟食群の摂取エネルギーが増加し、その結果体重も増加した。摂取カロリーに関しては、これまであまり差がなく体重増加のみしめしたが、今回は摂取カロリーにも影響があった。 2.記憶力への影響 <方法>7週齢のwister雄ラットを固形食群(5匹)と流動食群(5匹)に分け、10週間飼育を行った。9週目においてY字迷路を用いて、自発行動量と空間作業記憶の行動解析実験を行った。<結果>自発行動量も空間作業記憶も両群で有意な差は認められなかった。 3.血清生化学的検査 <方法>7週齢のwister雄ラットを固形食群(5匹)と流動食群(5匹)に分け、10週間飼育を行った。10週目に採血・血清分離を行い、生化学的検査を行った。<結果>血糖値に顕著な差が認められた。他の項目には差が認められなかった。 考察:咀嚼機能の低下が及ぼす生体への影響は、今回の実験では「体重増加による血糖値の上昇」という点にあった。昨年の結果よりこの段階では脳内ホルモンはほとんど変化していない。これらのことより咀嚼機能低下は症状として分かりづらい生活習慣病予備軍を引き起こす可能性を示唆する。
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