研究課題
本研究では生菌と死菌の区別が可能で、かつ口腔細菌の定量的検出が可能な口腔細菌の検出系をリアルタイムPCR法およびPCR阻害剤を用いて開発することを目的としているが、今回はう蝕に罹患した歯質から頻繁に検出されるStreptococcus mutansおよびStreptococcus sobrinusを標的とした生菌・死菌の区別が可能な定量検出系を開発・評価した。最初に、S.mutansおよびS.sobribnusに特異的な遺伝子領域を検索し、その領域よりそれぞれの菌種に特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを設計した。次に、そのプライマーの特異性を評価するため、各種口腔細菌の染色体DNAを精製、鋳型DNAとして設計したプライマーを用いたPCR法による特異性の評価を行った。次に、オートクレーブで加熱殺菌を行った死菌を生菌に加えたものおよび死菌非添加のサンプルについて、PCR阻害剤であるプロピジウムモノアザイド(PMA)を添加し、これら両群間におけるPCRによるDNA増幅に違いがみられないことを確認した。次に、唾液・歯垢に前述の死菌を加え、PMAで処理し、遺伝子増幅に差がみられないことを確認した。以上のことから、PMAはPCRにおいて死菌特異的に遺伝子増幅の阻害を行い、生菌特異的に遺伝子増幅を行うことおよび歯垢・唾液等の臨床検体中でもPCRによる増幅阻害が起こらないことが明らかになった。また、PMA添加/非添加のS.mutansおよびS.sobribnusを寒天培地に培養して、用いた濃度でPMAが同菌の生死に影響を与えないことを明らかにした。これらの結果から、PMAは口腔内細菌の生死を区別した検出に応用可能であることが明らかになった。さらに、これらの検出系を用いてin vivoバイオフィルムでの生菌・死菌の検出に使用したところ、応用可能であることが明らかになった。本研究は、バイオフィルム研究を遂行する上でも非常に有効なツールとなり得ることが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
生菌・死菌を区別した定量検出系について、根尖性歯周炎でのEnterococcus faecalisの検出系およびう蝕におけるStreptococcus mutans, Streptococcus sobrinusの2つの口腔疾患の検出系を開発してきており、他のバイオフィルム実験系でもその系が応用できることが明らかにされたため。
本検出系が口腔内試料でも応用可能であることが明らかになったため、生菌数/死菌数と根尖性歯周炎あるいはう蝕との関連について解析する。細菌の生死が疾患とどのような関係になっているのか、詳細に解析する。
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