研究課題/領域番号 |
22592350
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
岡本 公彰 鶴見大学, 歯学部, 講師 (30116008)
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研究分担者 |
野村 義明 鶴見大学, 歯学部, 准教授 (90350587)
花田 信弘 鶴見大学, 歯学部, 教授 (70180916)
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キーワード | 人類進化モデル / ピロシーケンス / 口腔細菌叢 / プロバイオテックス / 寿命 / 次世代シーケンサー / チンパンジー / 新菌種 |
研究概要 |
我々は、人類進化モデルとしてチンパンジーの口腔内細菌叢と口腔疾患および寿命の関連について京都大学霊長類研究所と共同研究をしている。本年度は5頭(9-27歳)のチンパンジー口腔内細菌叢についてピロシーケンス法を用い解析した。その結果、(1)3%cut offで207から856のoperational taxonomic units(OTUs)が得られ、今までに報告されていない細菌が多数存在する可能性が示唆された。(2)ヒトの口腔内優勢菌種はStreptococcusである。一方チンパンジーではStreptococcusが0.3-11%であるのに、Veillonellaが6-81%を占め、ヒトと優勢菌種が異なるデータが得られた。 (1)の結果を確認するため、う蝕原因菌のStreptococcusについて培養法で菌種を確認した。チンパンジーの口腔内から得られたS.mutans類似菌を分離し、この菌の分類学的位置付けを明確にした。細菌の菌種の定義の一つに、基準菌株と16SrRNA遺伝子の相同性が97%以下であると独立した菌種と認められる。この菌はS.mutansが最も近縁な菌種であり、その基準株との塩基配列類似度が96.4%を示し、新菌種としてStreptococcus troglodytaeと命名した(Int.J.Syst.Evol.Microbiol.Epub ahead of print)。今後、この細菌とヒトう蝕原因菌であるS.mutansの性状および遺伝子を詳細に比較、検討することにより、う蝕成因のメカニズム解明、う蝕原因菌の伝播様式の解明に役立つものと思われる。また、(2)の結果を培養法などによりVeillonellaが優先菌種であることを確認すると共に、Veillonellaが亜硝酸を産生する特徴があることから、プロバイテックスと亜硝酸による作用について検討を加え、寿命との関連を考察したい.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ピロシーケンス法を用る口腔内細菌叢の解析が非常に高精度で簡便に得られ、新しい知見が得られた。プロバイオテックスの効果については次年度の課題とする。
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今後の研究の推進方策 |
チンパンジーを用いたプロバイオテックスの摂取効果を調べることは、さらに十分なin vitroでの実験が必要と思われる。チンパンジーから得られた新菌種S.troglodyteaとヒトう蝕原因菌であるS.mutansの性状および遺伝子を詳細に比較、検討することにより、う蝕成因のメカニズム解明、う蝕原因菌の伝播様式の解明を検討し、最終的にヒト口腔細菌叢の寿命と関係を考察したい。
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